B.B.キングとはビール・ストリート・ブルース・ボーイの略称

1946年5月。20歳になったライリー・B・キングは2ドルをポケットに詰め込んで、ミシシッピ州インディアノーラからヒッチハイクでメンフィスにやってきた。間もなくビール・ストリートの路上で歌うようになり、ラッキーにもラジオ局WDIAでDJの仕事を得ることになる。この番組は人気を博し、ラジオ局は彼に”ビール・ストリート・ブルース・ボーイ”という芸名を付けた。そのうちファンたちはこの名称を略して”B.B.”と呼ぶようになり、数十年後にアメリカン・ミュージックの至宝となるB.B.キングが誕生したのである。この時代、ビール・ストリートは南部のブラック・エンタテイメントの中心地であり、ハウリン・ウルフ、ボビー・ブランド、アイク・ターナーなど、後に世界的な成功を果たす多くのミュージシャンたちが通りで演奏していたのだ。彼らは”ビール・ストリーター”と呼ばれていた。
B.B. キング・ブルース・クラブ

ビール・ストリートでもっともにぎわっているクラブは、1991年にオープンしたB.B.キング・ブルース・クラブである。現在ではニューヨーク、ナッシュビル、ニューオーリンズ、オーランドなどでも営業しているが、オリジナルのクラブはここメンフィスだ。1993年には多くのブルース・ミュージシャンをゲストに迎えたアルバム&ビデオ『Blues Summit』をここで収録している。

通常、このクラブのステージ前はスタンディングのダンスフロアになっているが、B.B.キングがここに出演する際には、ディナー・テーブルが設置され、ゆったりと食事やお酒を楽しみながらB.B.の演奏が楽しめた。

B.B.King’s Blues Club
143 Beale Street Memphis, TN 38103
(901)524-5464 http://www.bbkings.com/memphis/
B.B.キング・ブールヴァード

ビール・ストリートと3rdストリートの交差点に立つと、[3rd St.]の看板が[B.B.King Blvd]に変わっている。ここはB.B.の追悼パレードも行われた場所で、彼の功績に敬意を込めて改名されたのだ。2015年5月にこの世を去ったB.B.キングの葬儀はメンフィスで執り行われ、『聖者の行進』を演奏するマーチングバンドに引率されてビール・ストリート周辺を行進した。終了後、彼の遺体はブルース・ハイウェイであるルート61を南下して、B.B.のホームタウンであるミシシッピ州インディアノーラに運ばれた。B.B.の棺はこの小さな町にあるB.B.キング・ミュージアムに安置されている。

The B.B. King Museum and Delta Interpretive Center
400 2nd Street, Indianola, MS 38751
(662)887-9539 http://www.bbkingmuseum.org/
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著者紹介
桑田英彦 Hidehiko Kuwata
音楽雑誌の編集者を経て渡米。1980 年代をアメリカで過ごす。帰国後は雑誌、機内誌や会員誌などの海外取材を中心にライター・カメラマンとして活動。世界30カ国を旅して、観光地だけでなく、ライフスタイル、グルメなどを取材。またアメリカ、カナダ、ニュージーランド、イタリア、ハンガリー、ウクライナなど、海外のワイナリーを数多く取材。著書は『ワインで旅する カリフォルニア』『英国ロックを歩く』(スペースシャワーネットワーク)、『ミシシッピ・ブルース・トレイル』(スペースシャワーネットワーク)、『ハワイアン・ミュージックの歩き方』(ダイヤモンド社)、『アメリカン・ミュージック・トレイル』(シンコーミュージック)等。