イングルヌック Inglenook

イングルヌックの栄華と衰退 そして復活

イングルヌック Inglenook

イングルヌック(Inglenook)は、1879年にフィンランドからやってきたグスタフ ニーバム(Gustave Niebaum)により設立されました。
ヨーロッパの高品質なブドウをアメリカに持ち込んだグスタフ ニーバムは、ナパバレーのラザフォードで巨額の投資をして、フランスのワインに負けないようなワインを造り始めました。べリンジャーやボリューと肩を並べる、ナパの黎明期に誕生したワイナリーで、高評価を得るワイナリーに成長しました。
グスタフ ニーバムの死後、禁酒法が廃止されてすぐに甥孫のジョン ダニエル JR. がワイン造りを再開し、1941年の「イングルヌック カベルネ ソーヴィニヨン」は、ワインスペクテイターで100点を獲得します。しかし、名誉を得てもそれほどの利潤を生み出すことは有りませんでした。ジョン ダニエル JR.は、1964年にニーバムの邸宅と1500エーカーのブドウ畑を残し、「イングルヌック」のブランドと多くのブドウ畑を手放してしまったのです。1970年にジョン ダニエル JR. が亡くなり、彼の妻は2人の娘にはワイン造りは厳しいと判断し、邸宅と残りのブドウ畑を売却する事にしました。

フランシス フォード コッポラの別荘

1975年、サンフランシスコに住んでいた映画監督のフランシス フォード コッポラと夫人のエレノアはナパに別荘を探していて、このニーバムの邸宅と約1500エーカーのブドウ畑を購入します。
ニーバムの邸宅に滞在して修理をしている所に突然「カリフォルニアワインの父」といわれるロバート モンダヴィが訪問してきました。その訪問に対してコッポラはセラーから取りだした19世紀の“イングルヌック・カベルネ”を開栓して歓迎の意を表しました。
モンダヴィはコッポラにイングルヌック ワイナリーを設立したグスタフ ニーバムの事や、イングルヌック ワイナリーの栄華と衰退の歴史に関して詳細に話しました。興味深く話を聞くコッポラに、モンダヴィはワイン造りを進言しました。

コッポラのワイン造り

コッポラはモンダヴィから聞いた物語に共鳴して、ボルドースタイルのワインを造ることを決意し「ニーバム・コッポラ・エステート・ワイナリー」(Niebaum-Coppola Estate Winery)をスタートさせました。
コッポラは、1978年の初収穫のブドウで作ったボルドースタイルのブレンド赤ワインに、イタリア北部に流れるルビコン川から取って「ルビコン」と名付けました。紀元前 古代ローマ時代にルビコン川より内側には軍隊を連れて入ってはいけないとされていた元老院令を無視して、シーザーは大軍を引き連れて渡河した際に「賽は投げられた」と言って後戻りはできない事を意思表明しました。コッポラは、この事に掛けてワイン造りから撤退する事はないという決意を込めて「ルビコン」と名付けたのです。
1985年に『ルビコン1978 Vintage』がリリースされました。この『ルビコン1978 Vintage』はフレンチオークの桶で15ヶ月、その後フレンチオークの樽で18ヶ月、更に瓶で2年間熟成させたもので、ニーバム・コッポラ・エステート・ワイナリーのフラッグシップ・ワインとなりました。

イングルヌックの再興

コッポラは、この地に恥じない高品質なワインを造るだけでなく、伝説のイングルヌックを再興する事を計画しました。
切り売りされたイングルヌックの土地を徐々に買戻し、1995年になって最後に歴史的なニーバムのシャトーが建つ土地を買い戻すことができました。モンダヴィからイングルヌックの物語を聞いてから20年の歳月が経っていました。
1997年に修復されたシャトーが披露されました。
1998年に、1991年に迎え入れた優秀なワインメーカーによって造られた「カスク(CASK)」がデビューし、カリフォルニアを代表する高級ワインとして世界に知られていきます。
広大なブドウ畑を含む土地や建物は全て買戻し、世界で認められるボルドースタイルのワインを造ることができるようになりましたが、コッポラは重要なものを手に入れていませんでした。それは「イングルヌック」の商標でした。
2011年4月にザ・ワイン・グループから「イングルヌック」の商標権を取得し、ゼネラルマネージャーにフランスのシャトー・マルゴー(Chateaux Margaux)のフィリップ バスカル(Philippe Bascaules)をゼネラルマネージャーに向い入れてワインを造り「イングルヌック」は完全復活しました。

コッポラとワイン

フランシス フォード コッポラ ワイナリーナパバレーの「イングルヌック」で高級ワインを造る傍ら、ソノマアレキサンダー バレーにデイリーやミドルレンジのカジュアル・ラインのワインを造る「フランシス フォード コッポラ ワイナリー」を2006年に設立しました。
コッポラは映画事業で三度の破産を経験していますが、ワイン事業で巨万の富を築きました。
フランシス フォード コッポラ ワイナリー

 

協力:桑田英彦氏、カリフォルニア観光局

 

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 フランシス フォード コッポラ ワイナリー
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イングルヌックの場所と行き方

Inglenook 1991 St Helena Hwy, Rutherford, CA

サンフランシスコ市内中心部、ユニオン・スクエアからイングルヌックへ、車(レンタカー)で行く場合の一例。

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ワイナリーの説明に関して

桑田英彦氏の著書『ワインで旅するカリフォルニア』より引用させていただいております。
更に詳しい情報は、『ワインで旅するカリフォルニア』をご覧ください。

ワインで旅するカリフォルニア単行本: 144ページ
出版社: スペースシャワーネットワーク (2014/2/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4907435193
ISBN-13: 978-4907435196
発売日: 2014/2/28
商品パッケージの寸法: 21 x 13.8 x 1.8 cm

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